かぐや姫の物語│正体/犯した罪/捨丸飛ぶ/浮気/伝えたいこと【考察・解説】

かぐや姫の物語│正体/犯した罪/捨丸飛ぶ/浮気/伝えたいこと【考察・解説】

ジブリ映画『かぐや姫の物語』についでです。

高畑勲監督の前作『ホーホケキョ となりの山田くん』から14年ぶりの長編作品です。

そして、最後の作品でもあります。

本記事では、

などについて考察・解説していいます。。

気になる方はぜひご覧くださいませ。

『かぐや姫の物語』作品情報

作品名『かぐや姫の物語』
公開日2013年11月23日
制作国日本
上映時間137分(2時間17分)
監督・原案・脚本高畑勲
原作『竹取物語』(作者不明)
制作スタッフ坂口理子(脚本)、久石譲(音楽)、西村義明(制作) ほか
主題歌『いのちの記憶』二階堂和美
(映画『かぐや姫の物語』作品情報)

『かぐや姫の物語』あらすじ・内容紹介

この地で、
ひとりの女性が生きた。
笑い、泣き、喜び、怒り、
その短い生の一瞬一瞬に 
いのちの輝きを求めて。

数ある星の中から、
彼女はなぜ地球を選んだのか。
この値で何を思い、
なぜ月へ去らねば 
ならなかったのか。
姫が犯した罪とは、
その罰とはいったい 
何だったのか──。

日本最古の物語文学
「竹取物語」に隠された
人間・かぐや姫の
真実の物語。

姫の犯した罪と罰。

引用元:映画『かぐや姫の物語』公式サイト│畑事務所・GNDHDDTK
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かぐや姫(竹取物語)のあらすじ【原作】 かぐや姫(竹取物)のあらすじを簡単に!

『かぐや姫の物語』登場人物/キャスト

  • かぐや姫/ 朝倉あき
  • 竹取の翁/地井武男
  • /宮本信子
  • 捨丸/高良健吾
  • /中村七之助

かぐや姫の正体とは?考察

翁の手のひらにいる小さなかぐや姫
出典元:スタジオジブリ公式サイト(https://www.ghibli.jp/works/kaguyahime/)

正体1:かつては地球で暮らしていた

理由は以下になります。

かぐや姫:「遠い昔、この地から帰ってきた人がこの歌をくちずさむのを月の都で聞いたのです。

月の羽衣をまとうと、この地の記憶は全てなくしてしまいます。

悲しみも悩みもありません」

引用元:映画『かぐや姫』│スタジオジブリ

かぐや姫:「あの人も…あの人もまた、本当はこの土地に帰ってきたかったのです。本当は」

引用元:映画『かぐや姫』│スタジオジブリ

上記のセリフから、

“月の都には、地球から帰ってきた人がいる”ことが分かります。その人は地球の記憶を亡くしています。

作中、かぐや姫が、地球の歌を何故か知っていたり、田舎の冬景色に既視感があったりするシーンがあります。

何故かといえば、かぐや姫自身もまた、かつて地球に暮らしていたことがあるからなのです。

かぐや姫の前世って?

かぐや姫が雪のなかで倒れたとき(服がボロボロで髪型も違う)、周りに天人の妖精が舞っていることから、恐らくこれが前世(地球で亡くなった日)の記憶で、夢に見ていたのでは……と思うのです。

“遠い昔にこの地(地球)から帰ってきた人”はどこか大仏を彷彿とさせる見た目をしていました。

そして迎えにきた天人のひとりは大仏そのものの見ためをしていました。

おそらく、地球上で亡くなった純粋な魂が月に昇格し、「仏」に近い存在となっていくのではないでしょうか?

かぐや姫は、かつて地球で暮らしていました。

正体2:尊い身分

天人たちに「姫」と呼ばれていることや、

“うちの子を頼みます”と言わんばかりに黄金や着物を与えるあたりから、

かぐや姫は尊い身分の人だと考察できます。

かぐや姫は、尊い身分の姫です。

かぐや姫の犯した罪とは?考察

桜を見て喜ぶかぐや姫
出典元:スタジオジブリ公式サイト(https://www.ghibli.jp/works/kaguyahime/)

かぐや姫は月で育ちましたが地球に恋い焦がれました。そのことが罪とみなされたのです。そしてかぐや姫は次の条件のもとに地球にやってきました。つまり、かぐや姫が地球の不純さを経験し、地球は穢れていると認めると、彼女の罪は許され、彼女を月に連れ帰る使者が送られるという条件です。

引用元:SSN Insider

「姫とあろう者が、そんな汚らわしい星に憧れるなんて言語道断。罰として、身をもって地球がどんな場所なのか味わってきなさい。

あなたが地球に行きたいというなら行ってよろしい。ただし、地球で苦しい気持ちになったら月へ帰ってこなければなりませんよ」

……そんなやり取りがあったのでしょうかね。とにかく月の都のお姫さまはそんな契りの元、自ら憧れてやってきたのです。


かぐや姫が御門にバックハグされたときものすごい拒絶反応を起こしたのは、もしかすると、単に御門が気持ち悪いと感じただけではなかったのかもしれません。

御門に抱きしめられて嫌がるかぐや姫
出典元:スタジオジブリ公式サイト(https://www.ghibli.jp/works/kaguyahime/)

不快感が限界突破したことにより、そのタイミングで思い出したのかなと思うわけです。自らの罪を。そして、自らの過ちを認めなければいけない。一種の敗北感のようなものを味わったのではないかと思うのです。


かぐや姫:「私は生きるために生まれてきたのに」

引用元:映画『かぐや姫』│スタジオジブリ

地球で生まれ、生きたいと願っていたかぐや姫。

最後に、記憶を奪われたことが、本当の罰に思えてなりません。

かぐや姫が犯した罪は、不純な地球に恋焦がれたことです。

捨丸、飛ぶ。なぜ?考察

捨丸とかぐや姫が飛ぶ姿
出典元:スタジオジブリ公式サイト(https://www.ghibli.jp/works/kaguyahime/)

西村 で、なぜあそこで飛ぶかと言ったら、それはもう……性の象徴でしょうね。男性と女性の、結びつきの象徴でしょうから。

── 高畑さんも「あれは性の象徴だ」とおっしゃっていたんですか。

西村 いや、本人は明言しないです。僕は言いましたけどね。「これ、そうですよね?」って聞いたら、「まあ、そういうふうに捉えることもできるでしょうね」って(笑)。でも、明らかにあれはそういうことですよね。

── グッとくるシーンでしたよ。

西村 うん。画も、音楽も、どんどん上昇していくじゃないですか。上に上に、高まって高まって、最後はバーンと落ちる。明らかにメタファーですよ、あれは。

引用元:WEBアニメスタイル(https://animestyle.jp/2014/02/10/6854/)

ジブリはあからさまにそういう描写を描くことはありません。西村さんの考察通り、メタファーだといえるでしょう。


恐らく月の都では男女の営みはないのでしょう。

なぜなら、原作から考察するに、月の都は“不老不死”の理想郷です。子を儲ける必要はないからです。

また、恋愛に別れは悲しみがつきものですし、行為や出産の際には痛みが伴います。

かぐや姫が捨丸と飛ぶ行為は、月で生きていたかぐや姫にとって、「生」を実感できる素晴らしい行為だったのではないでしょうか。


捨丸は、かぐや姫にとって心の許せる数少ない人でした。

もし彼と結ばれていたのなら、かぐや姫の人生は変わっていたのでしょうね。

捨丸が飛ぶシーンは、男女の営みのメタファーです。

なぜ、捨丸に奥さんと子供がいたの?浮気?考察

かぐや姫と再会を果たすシーンは一見感動的ですが、捨丸が「一緒に逃げよう!」と言ったのは考えものです。

なぜなら、捨丸には妻子があるからです。

つまり、かぐや姫が愛した捨丸でさえ「不純な人間」だったのです。

捨丸が結婚して妻子をもっていたのは、捨丸が不純(不倫している)だというメッセージです。

最後、かぐや姫が泣いたのはなぜ?考察

地球に想いを馳せるかぐや姫
出典元:スタジオジブリ公式サイト(https://www.ghibli.jp/works/kaguyahime/)

かぐや姫は、なぜ涙が出るのか分かっていません。
すでに地球で過ごした記憶を失っているからです。

かつてかぐや姫がそうだったように、
今度はかぐや姫が地球を見て涙を流す様子を見て、地球に想いを馳せる誰かが現れるのだと思います。

伝えたいことは?考察

本作を通して伝えたいことは、以下の2つだと考えます。

  1. 地球について
  2. 偽りから得られるものはなにもないということ

伝えたいこと1:地球について

地球は理想郷の対比として描かれています。

しかしそれでも、かぐや姫は月へ帰ることを拒み、悲しみます。

地球は四苦八苦の世界。だからこそ「生」を実感できるのではないでしょうか。

かぐや姫が子供の頃に感じたきらめきや、捨て丸に対する淡い心も、きっと何事にもかえられない感情だったのでしょうね。

生きる喜びついて、あれこれ考える価値はありそうです。

「だからこそ、地球は美しい」……かぐや姫はそんな風に考えていたのかもしれません。

伝えたいこと2:偽りから得られるものはなにもないということ

かぐや姫に求婚をする5人の公達
出典元:スタジオジブリ公式サイト(https://www.ghibli.jp/works/kaguyahime/)

かぐや姫の名づけを祝う3日3晩続いた宴会では、印象的なセリフがあります。

かぐや姫:ねぇ…この宴は、私の名づけを祝うものなのでしょ?

女童:もちろんでございます。

かぐや姫:でも、ここにこうしているだけでは、私、まるでいないのと同じみたい。

引用元:映画『かぐや姫の物語』スタジオジブリ
地球に想いを馳せるかぐや姫
出典元:スタジオジブリ公式サイト(https://www.ghibli.jp/works/kaguyahime/)

どんちゃん騒ぎをしている裏で、かぐや姫の心情を機にかけた男はいませんでした。

男たちはかぐや姫の容姿が“噂通りに美しいのか、それともお化けみたいなのか”で盛り上がっていました。

外見で価値が決まるといわんばかり。本当に姫の心を覗こうとするものなどいなかったのです。


また別のシーンでは、一見素晴らしかった公達も、醜女(かぐや姫の代わりだま)を見たとたん、逃げ出しましたね。
ある者は財産を失い、ある者は命を失いました。

1度も会ったことがないのに、熱心にアプローチしたくる姿は、かぐや姫にとって滑稽だったことでしょう。

美女からすれば、外見を誉められても虚しいだけなのです。

“わたし”を見てほしいのです。


翁はかぐや姫の幸せを願っているといいながら、エゴでした。

かぐや姫もまた、翁に気を遣うあまりに、本心を偽っていました。

その結果、待っているものは悲劇でした。

偽りからはなにも得られません、後悔と虚しさが残るだけです。

『かぐや姫の物語』正体/犯した罪/捨丸飛ぶについて考察まとめ

本記事ではジブリ映画『かぐや姫の物語』について考察してみました。

  • かぐや姫の正体……月の都の姫。かつては地球で暮らしていた。
  • かぐや姫が犯した罪とは?……不純な地球に恋焦がれたこと。
  • 捨丸が飛ぶシーンは?……男女の営みのメタファー。
  • 捨丸は、なぜ結婚して子供がいたの?浮気?……浮気(不倫)。不純さの象徴。
  • 最後、かぐや姫が泣いたのはなぜ?……たけのこの心がどこかに残っているから。
  • 伝えたいことは?……偽りから得られるものはなにもないということ。地球について。

という結果となりました。

ご参考になりましたら幸いです。

以上です。最後までご覧いただきありがとうございました。

この記事を書いた人 Wrote this article

白うさぎ

白うさぎ

趣味は一人映画。 好きなジャンルは「アニメ・ファンタジー・サスペンス・ミステリー」です。考察系が好きです。