箱男は実在した!実話なの?「難しい」読み解くヒントは?

箱男は実在した!実話なの?「難しい」読み解くヒントは?

安倍公房氏の原作映画『箱男(1973)』についてです。

5年以上かけて執筆されたという力作です。前衛的で難しいと話題です。

作品を読みとくにあたり、作品が生まれた背景を知ることは最も手がかりになるように思います。

……ということで本記事では、

など読み解くヒントについて解説していきたいと思います。
もしよろしければご覧くださいませ。

『箱男』作品情報

作品名『箱男』
発売日‎‎1973/3/30
出版社新潮社
ページ数248ページ
作者安倍公房
(原作小説『箱男』作品情報)
映画化作品。2024年公開予定
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安部公房のプロフィール・受賞作

本名:安倍公房(あべきみふさ)
生年月日:1924年3月7日(68歳没)
出身地:東京都

東京都北区に四人兄弟の長男として生まれ、少年期を満州で過ごす。
成城高校卒業。東大医学部卒業。

学生時代から詩や小説を執筆。
戯曲を執筆。

趣味はカメラ。


  • 1951年、「赤い繭」で戦後文学賞受賞『壁 – S・カルマ氏の犯罪』芥川賞受賞
  • 1958年、「幽霊はここにいる」岸田演劇賞受賞
  • 1963年、「砂の女」読売文学賞受賞
  • 1967年、「友達」谷崎潤一郎賞受賞
  • 1968年、「砂の女」フランス最優秀外国文学賞
  • 1972年、「未必の故意」「ガイドブック」芸術選奨文武科学省大臣賞
  • 1975年、「緑色のストッキング」読売文学賞受賞

箱男は実在した!安倍公房と箱男の出会い。

以下のエピソードをご紹介します。


安倍公房氏は「浮浪者(ホームレス)」に興味があったそうです。

とある日、安倍公房氏は上野にホームレス狩りを見物しにいきました。
そのなかに「箱男」がいました。

安倍公房氏は、彼の風貌にギョッとしたといいます。

講演会では、当時の感想を以下のように語っています。

ちょうど上半身がすっぽり入るくらいの段ボールの箱。ちょうど冷蔵庫くらいの大きさですね。そういう段ボールの箱に入ってて。で、その箱ごと座って腰かけてるんですね。そして真正面に四角い覗き穴がついていて、そこにあのビニールのカーテンが下がっててね。

で、カーテンの真ん中を割ってあるわけですね。で、ある程度しなやかな重い質のビニールですから。ちょっとこうカラダを傾けるとあの、真ん中が開くんですね。不透明なビニールですから、そのままでは外を覗けない。ちょっとこう……傾くとね、隙間ができて向こうが見えるんですよ。で、僕はこうびっくりして前に立ち止まって見たら、向こうもこう、傾いてね、隙間からこっち見たんですよ。

出典元:小説を生む発想: 箱男について 安倍公房公演

この段ボール箱の特徴は、作中に登場する箱男の特徴を捉えていることが分かりますね。

段ボール箱

安倍公房氏は、あまりの気持ち悪さに敗北感を覚えたのだとか(笑)。

警官たちも、取り調べ中に男を箱から出さなかったそう。
非常に興味深いです。彼らはまるで社会のルールなど影響しない区域にいるかのよう……。

かくいう筆者も、街のホームレスに、

「なにしてるんですか?」「そこ、公道ですよ」

などと言う気にはなりません。

彼らには彼らの生き方があるからです。彼らには常識を翻すパワーがあります。


調べた結果、箱男は実在したということが分かりました。

『箱男』は実話?

部分的な実話として、前述したように「箱男(=浮浪者」)は実在していました。

ただし本書における「箱男(≠浮浪者)」は匿名で誰にもなりえる存在です。


小説『箱男』は実話ではありません。(箱男のモデルとなった人物は実在しました)

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『箱男』テーマは?

だそうです。

デモグラシーの意味

民主主義。民主政治。

安部公房は「本物の医者」か「偽医者」かは、免許のあるなしで決まることに思うところがあるといいます。
(とくに戦時中、実力と伴わない場合がある)

ブラックジャック

例えば、手塚治虫氏の人気漫画『ブラックジャック』を参考にするとイメージが湧きやすいかもしれませんね。
彼以上のお医者さんは中々いないでしょう。

つまり、現在の社会では「登録がない=偽物」ということになり、「箱男は誰でもない=究極のデモクラシー」な存在なのです。


もしかしたら、「箱男」には強烈な個性があると感じるかもしれません。

しかし中身が入れ替わったとしても、恐らく誰も気がつかないはず。
それが「匿名性」なのです。

数が増えれば尚更です。

日本はとくに匿名を好む国だと言われています。箱男は国民性にピッタリです。


因みに、安倍公房氏は「文学作品の解釈はひとつでない」としています。

つまり、読者の数だけ正解があるのでした。

小説『箱男』は、哲学的な小説だといえますね。

本書には、安部公房氏の経験・思想が練り込まれています。

小説『箱男』テーマのひとつとして「究極のデモクラシー」があげられました。

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箱男は実在した!実話?難しい!についてまとめ

本記事では原作小説『箱男』について読み解くヒントを解説してみました。

  • 箱男は実在するのか?……箱男(ホームレス)は、上野に実在した。
  • 実話?……実話ではない。
  • テーマは?……究極のデモクラシー。

という結果になりました。

これらの前知識をたくわえてから再び本書に挑むと、また見え方が違ってくるかも?

以上、ご参考になりましたら幸いです。

最後までご覧いただきありがとうございました。

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白うさぎ

白うさぎ

趣味は一人映画。 好きなジャンルは「アニメ・ファンタジー・サスペンス・ミステリー」です。考察系が好きです。