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小説『箱男(1973・安部公房著)』についてです。
「難解」といわれている作品です。
著作権が消滅しているため、本記事にあらすじを分かりやすくまとめてみました。
- 簡単なあらすじ
- 詳細なあらすじ
ふたつの項目に分けてご紹介していきますので、
どうぞご覧くださいませ。
【箱男(原作小説)】作品情報
作品名 | 『箱男』 |
---|---|
発売日 | 1973/3/30 |
出版社 | 新潮社 |
ページ数 | 248ページ |
作者 | 安倍公房 |
簡単なあらすじ
Cは軍医殿の情報を借りて診療をしていた。
やがて軍医殿の変死体が発見される。
医者と彼女は、“箱”に執着をみせるが……一体なぜ?
箱を巡る様々なストーリー。
箱男がノートに連ねるそれは、事実か虚実か――?
誰が箱男で、誰が箱男になり損ねたのか――?
“匿名性”をとことん突き詰めた前代未聞の物語。
詳細なあらすじ(各章ごと)(ネタバレ)
※はじめに、小説『箱男』には想像の産物が紛れています。
以下のあらすじには、真相や考察は含まれていません。
「箱男のノートに綴られた内容」を要約したあらすじとなります。
例えばAの場合
Aのアパートの下に、1人の箱男が住み着いた。
Aは箱男を追っ払おうと躍起になる。
空気銃によって撃退に成功。
しかし結果的に、自らが箱の魅力に囚われ、箱男となり姿を消してしまう。
安全装置をとりあえず
箱男は、「5万円で箱を買いたい」と申し出た女を待つために、橋の下で雨宿りをしている。
待ちぼうけしている。
表髪裏に添付した証拠写真についての二、三の補足
Aの空気銃により肩に怪我を負った箱男。
自転車に乗った若い女が現れ、3千円を渡し「坂の上の病院へ」箱男に行くように告げた。
箱男は、箱を脱ぎ捨てて病院へ向かう。
そこには白衣姿の自電車娘と、医者がいた。
気づいたときにはベッドの上。白衣の彼女に話を聞いてもらっているうちに、箱男に戻らなくて良さそうだと感じ、5万円で箱男から箱を買い受けてやろうという約束をとりつけた。
まんまと嵌められたようだった。
それから僕は何度か居眠りをした
箱男は夢をみる。
何度居眠りを繰り返しても、箱男は箱男のままだ。
約束は履行され、箱の代金5万円といっしょに、一通の手紙が橋の上から投げ落された。つい五分ほど前のことである。その手紙をここに添付しておく
落された手紙の内容は、「あなたを信頼します、箱を処分してください」というものだった。
……………………
箱男は、彼女からの手紙を何度も読み返す。
彼女が“5万円支払ってでも箱を処分したい”と考えた動機について思い悩み、仮説を立てる。医者が関係していると睨む。
箱男は、“手紙と5万円を落すだけ”という彼女の事務的なやり取りに不満を覚えていた。
箱男にとって、箱は意味のあるものだし(5万円はとるにたらない金額)、
彼女の存在によって、箱から脱皮できることを期待していたのだ。
鏡の中から
箱男は坂の病院に向かう。
彼女に5万円を返し、話し合うためだ。
病院の庭に侵入し、彼女の部屋を覗く。
部屋のなかには、裸の彼女と贋の箱男(医者)がいた。
彼女の裸を覗くことに夢中になる。また、彼女と親密な贋箱男に嫉妬もする。
以前、肩の手当てをしてもらったあとに聞いた話によれば、“彼女は元ヌードモデル。今は見習看護師で、二年前に妊娠中絶の手術を受けた。以降、この病院になんとなく居着いた”のだという。
翌日に出直すことにして、箱男はひとまず引き上げる。
別紙による三ページ半の挿入文
女と先生の会話。
女がとある男に裸を見せ、注射したときのことを話している。
書いている僕と、書かれている僕の不機嫌の関係をめぐって
無人の砂浜にて。
箱男は、髭をそって身体や服を洗い、身支度を整えた。
箱から出るつもりだった。箱がトンネルなら、瞼の裏に焼き付いた裸の彼女が、トンネルの出口だった。
――箱男になって間もない頃の回想をする。道端の狭い隙間に箱男Bの脱け殻を見つけたことがある。
箱の死がBの死とは限らない。そう思いたかった。だからその証拠を探したのだが、真意は謎のままだった。
そろそろ箱から出たい。“病院に向かい、5万円を返し、彼女と医者と話すシミュレーション”をする。
贋箱男(医者)は、贋箱男と箱男が入れ替わる提案をしてくるが、中々信じられない箱男。
それに、“覗かれる”ことには慣れていなかった。
やがて贋箱男と箱男の口論が始まる。箱を脱ぐ勇気がないこと――筆者は誰なのか――だが、所詮、贋箱男も彼女も、箱男の空想上の人物にすぎない。
供述書
C(医師見習い)の供述書。
Cは、戦時中に衛生兵の頃の上官・軍医の名を借りていた。
また、内縁の妻(奈奈)と同居していた。
その後、看護婦見習い(戸山葉子)を雇いいれたところ、奈奈が不満として別居を申し出た。
腕の技術は確かであるが、免状を持たずに、軍医殿の名を借りた不当診療をしていた。
それは法に背く行為だった。
Cの場合
Cは供述書を書いている。
壁際のベッドには、箱男に似せてつくった贋の箱がある。机には供述書。
ノートには、明後日の事件のあらましを過去の出来事として綴っている。
変死体が海岸公園に打ち上げられるのだ。
続・供述書
軍医殿には自殺の危険性があった。
終戦の前年、軍医殿は奇病にかかった。Cは惜しまぬ看護にあたった。
軍医殿が診療所を開設後も、症状は好転しなかった。代わりにCが代診していた。
不当医療行為を続けた理由は、軍医殿の治療に麻酔が必要なのと、生計が確保されるからだった。
奈奈と内縁の関係をもったのは、軍医殿がCに見捨てられることを恐れて、あえてそう仕向けた結果だった。(軍医殿の被害妄想の症状)
次第に軍医殿の症状が悪化したため、Cが軍医殿に成り済ますことになる。
――ある日、軍医殿が家を抜け出した。段ボール箱を被った状態の遺体が見つかった。
軍医殿は戸籍や資格、人格までもCに譲渡し、自分が何者か分からなくなっていたという。
死刑執行人に罪はない
遺体慰安室にて。
男は自分の希望でそこにいる。
ドア越しに、“君”の気配がする。君は死刑執行人。互いに同意のうえだった。
男は麻薬中毒者だ。そのためよく眠れなくても、君が部屋に入ってきたら狸寝入りをすると決めていた。君を安心させるために。
君は、男を溺死に見せかけるやり方で死刑執行した。
ここに再び そして最後の挿入文
このノートに書かれてあったことは、想像上の産物であっても、嘘ではない。
法律が届かない場所にいる人々相手の殺人は安楽死だ。つまり、箱男相手の殺人にも同じことがいえる。
Dの場合
少年Dはアングルスコープを作った。
あらゆる場所を覗いた。調子にのって街を覗いた。大胆になって隣の家(女教師)の便所を覗いた。
が、女教師に見つかってしまう。
叱られて仕返しされた(裸にされ覗かれた)。
・・・・・・・・・・・
病院の休診日。
元カメラマンの箱男が、彼女の元へ向かう。
彼女は、箱男が約束を守ってくれなかったことに驚き、箱を脱ぐように言う。
しかし脱げない。海水で洗った服が無くなってしまったため、箱の下は裸だったのだ。
箱男は「自分も贋物だが、ノートは本物(本物の箱男のもの)」だということを告げる。
夢のなかでは箱男も箱を脱いでしまっている。箱暮らしを始める前の夢をみているのだろうか、それとも、箱を出た後の生活を夢みているのだろうか……
ショパンは、花嫁を迎えにいくため、馬車に乗っていた。
ただし、馬車を引いているのは馬ではなく段ボールを被った人間(父親)だった。金が無いからだった。
向かう途中で、ショパンの立ち小便姿を花嫁に見られてしまい、結婚の話は白紙となる。
ふたりで都会に出て、ショパンは彼女の絵を描きつづけた。売れた。やがて切手の発明者となる。
のちに郵便事業が国営化すると、ショパンは贋造者とされるが、父親の赤い箱はポストとして受け継がれた。
開幕五分前
男と女が恋について話している。
そして開幕のベルも聞かずに劇は終った
彼女は玄関から出ていってしまった。
……………………
男が聞いた音は、実は玄関のドアの音でななく部屋のドアの音だった。
彼女のことは家のなかに閉じ込めている。
彼女の部屋に向かったところ、どこかの売店裏の路上だった。
彼女を探さなければならない。
ラスト、救急車のサイレンが聞こえてきた。
【箱男(原作小説)】のあらすじ・簡単なあらすじまとめ
本記事では原作小説『箱男』についてあらすじをまとめてみました。
『箱男』は著作権切れの作品なので、青空文庫で読むことができます。気になった方はぜひ覗いてみてくださいね。奥深い作品です。
では、以上となります。
最後までご覧いただきありがとうございました。